第33章 大王様と穢れ
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「国見ちゃん、そんなになってまで彼女守りたいの?」
「…俺は岩泉さんのためにやってるんです…」
身体の至る所から血を垂らしてすっかりフラフラの国見は及川を睨んだ。対する影山はさほど傷を負っていない
及川はニッコリと微笑みながら弱っている国見に近づきお腹を1発殴った。ウっ…と低く唸った国見は、その場に膝をついた
「岩ちゃんのため…?笑わせないでよ!!!!」
フフフ…と小さく笑っていた及川だが、急に豹変して国見に叫んだ。及川は、そのまま気がおかしくなったように小さく何度もつぶやいた
「…なんで、なんでみんな俺のやることに口出すのさ…邪魔するのさ…俺は、紫乃さんのためにやってるんだ…。紫乃さんのためなんだ…紫乃さん……紫乃さん…紫乃さん…ッ!!!」
呼吸を荒げるくらいの口数で紫乃の名を呼ぶ及川を、影山と国見は哀れむ目で見ることしかできなかった。
すると、夜琉の走り去った林から人の気配を感じた。
それは紛れもなく夜琉の気配だった
「…夜琉ッ!!お前逃げろって…」
「うん、夜琉ちゃんはやっぱりいい子だね」
及川のいい子という言葉に夜琉は思わず唇を噛む。いい子じゃないということを言いたいのを必死にこらえるように
「夜琉ちゃん、彼氏君に嘘ついてまで来てくれたんだよ?ちゃんとカンシャしてよォ?」
「はいはい、ありがとう覚ちゃん。じゃあ夜琉ちゃん、少し話をしようか」
そう言って及川が近づくと膝をついていた国見はまた立ち上がろうとした。でも、それを呼んでいたように及川は影山に目配せをした。
それが合図であるように影山は国見の後頭部を銃の後方で殴った。重い音と共に国見のうめきが聞こえたと思ったら、彼は今度は地面に横たわってしまった