第33章 大王様と穢れ
「アレェ~?彼氏君に連絡するの~?」
スマホを弄っていたら、天童さんはあたしのやっていることが分かったように声を上げた。黒尾さんの連絡先を電話帳から探していて今ようやくタ行に入ったところだった
「いいのォ?君の彼だったら絶対すぐに来てくれると思うけど、そしたら…俺と及川君とトビオ君の3人をどーやって相手にするのかねェ~?」
・・・スマホを弄る手が止まった。
いや、止まったんじゃない、止めてしまった。
菅原さんに、「心配かけないようになんて思わないで。あいつは、貴方のためなら何でもしてくれると思う」という言葉を思い出したけど・・・それは自分でも分かってる
・・・分かってるからこそ、頼れない
あの人だったら・・・きっと死んでも守ってくれる
分かってる・・・
『・・・。』
あたしは、天童を見ながら黒尾さんに電話をした。
発信ボタンを押して耳に宛がう
「あっ、いいんだァ~。俺達に殺されても」
『・・・ッ!!』
嫌だ・・・彼を殺されるのは嫌だ
ガチャッ〈もしもし、どうした?〉
黒尾さんが電話に出てしまった。
仕事中だと思うけどそれでも出てくれた。
『黒尾さん助けてください』
そういえばいい。分かってる
でも・・・黒尾さんが殺されちゃったら・・・
そう思った瞬間、あたしの中の悪い子がまた現れた
『…ご、ごめんなさい…何でもないです』
彼に、嘘をついた。
あたしは・・・そのまま耳からスマホを離して電話を切った