第33章 大王様と穢れ
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『はぁ…、はぁ…』
浴衣で走るのって思ったより疲れるし走りにくい。
背中から銃声みたいなのが聞こえるけど、それでもあたしは走り続けた。
祭りが始まる前に国見さんに言われていた
「もし何かあったら、迷わず逃げろ。そのあとは…俺が何とかしてやる」って言われたから
逃げろなんて言われても・・・どこに行けばいいんだろ・・・
『…あっ、そうだ。黒尾さんに連絡しないと!!』
浴衣に合わせたかごバックに入れていたスマホを開いてメールを打とうとした
暗がりでスマホの画面の明かりがよく目立っていた
だから、そんな明かりには何かしら寄ってくるものだ
「夜琉ちゃん見ぃ~つけた♡」
カサッ…
背後で草が揺れた音と共に聞き覚えのある声が聞こえた。
スマホを持つ手が思わず震えだす。
振り返ることすら怖くてできない・・・
『…はぁ…はぁ…はぁ』
走っていないのに息が上がって仕方がない
「こォんなとこで…何してんのォ?」
『…はぁ…、てっ…天童さ…』
「…久しぶりィ」
動かない身体を強引に動かして後ろを向くと、暗がりでも分かる赤く逆立った髪が目に入る。
この人がここにいるってことは、当然及川さんに言われてあたしを追ってきたか、あたしがこういうことをするってわかってたかどっちかだろう
「俺がいるってことはさ、どうすればいいか分かるよね?」
ニッコリと笑っているが、その手に持ってるのは彼愛用のダガーナイフ。
それを見た瞬間、無意識に右肩が痛くなった。
左手で肩を擦り右手に持ったスマホをそっと通話モードにしながら後ずさりをする
黒尾さんに連絡するために