第31章 黒猫の説教と極悪妖怪
しばらく走っていくと、すぐに黒尾さんのマンションに着いた。
部屋に入るまでは何も会話はなかったけど、入った途端に玄関の壁に追いやられた。
「…何言われた?」
『…えっと、白布さんが牛島さんとの結婚のために…また白鳥沢に連れていくって…』
「…断ったんだよな?」
『…と、当然です!!牛島さんと結婚なんてしたくないです!!あたしはあたしのやり方で及川さんのことを何とかしたいですし、それに…あたしは…』
あたしは黒尾さんの顔を見た。
黒尾さん・・・なんだか悲しそうな顔している。
今にも泣きそうというか・・・
『あたしは…黒尾さんがいいです…。』
「夜琉…」
『…黒尾さんが、好きですから…だからッ!!』
さらに続けようとしたら、黒尾さんに抱きしめられた
何も言わない。ただあたしをギュッとして頭を撫でてくれた
「…夜琉、俺が…好きか?」
『…好き、ですよ?』
「…誰かと結婚したりしないよな?」
『…しませんよ』
「…勝手に、…勝手に死んだりしねえよな?」
『…しませんよ』
そう答えたら、あたしを抱きしめる腕の力が強くなった。
でも痛くないし、苦しくもない。
・・・あったかい
「…ごめんな、俺…またお前を失っちまいそうで…怖くなってよ…」
『いえ…あたしも…、ごめんなさい』
黒尾さんの胸に顔を埋めて小さくつぶやく。
抱きしめていた黒尾さんの手があたしの肩に触れるとそっと押した。
押された拍子に黒尾さんと目が合った。
黒尾さんの顔が近づくと、それはゆっくり唇に触れた
触れるだけのキスをして、あたし達は顔を見合わせて・・・吹いた
『黒尾さん泣いてますよ?』
「泣いてねえよクソガキ!!!」
そう言って着ていたジャケットの袖で顔を拭うと、すぐにあたしの額にデコピンが飛んできた。