第30章 白鷲の交渉
『赤葦さん!?』
「夜琉さん、お久しぶりです。迎えに来ましたよ」
まるで執事がお嬢様に言うようなセリフを笑顔でさらりと言うのがこの人だ・・・。白布さんに右腕を掴まれて赤葦さんに左腕を掴まれているこの状況は一言で言うなら修羅場というやつだ
「なんでお前がいる…。手を離せ」
「それはこっちのセリフだ。女性が嫌がることをするな。お前の若様に教わらなかったか?賢二郎」
普段からこの2人はあまり主張するタイプじゃない。でも今2人のオーラは最悪だ。まさに絶対零度。いるだけで凍りそうなくらい2人が怖すぎる・・・
『あ、あの…赤葦さん、どうして…?』
「…うちの社長がここのコーヒーじゃなきゃ嫌だっていうから、仕方なくね。そしたら可愛い子いたから…ついね」
またこのお兄さんは!!
この絶対零度空間で唯一顔真っ赤で体温高め状態だろう。
「かっこつけるな。手を離せ」
「…夜琉さん。―――――――。」
『!!!!!』
急に赤葦さんがあたしの耳元に顔を近づけてそっと囁いた。
その囁かれた言葉にあたしはゾッとしてしまった。
そしてあたしはすぐに白布さんの手を払った。
急に力を込められたからさすがの白布さんも手が離れた。
「なっ…お前ッ!!」
「…フラれたな賢二郎。もっと男を磨いて出直してこい」
意外と背の小さい白布さんをさらに高い頭上から見下ろす赤葦さんの顔は完全に勝ち誇った顔だった。
あたしは、赤葦さんに連れられてコーヒーショップを出た。
「・・・。」
残された白布は、自身のスマホでどこか連絡をした。
「…白布です。…申し訳ありません。また、梟谷に…」