第27章 黒猫の生きる意味
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「それで…そのあと木兎に頼んで俺はあのカフェを開いたんだ。幼馴染の研磨も製菓学校出てやることなかったから一緒にケーキ屋も・・・」
黒尾さんの最後の方の言葉は、あたしの耳には一切入ってこなかった。
黒尾さんが殺し屋だったこととか、暗殺のお仕事に失敗しちゃったから死にかけたとか・・・そんなことはどうでもよかった
あたし・・・なんでそんな大事なこと忘れてたんだろう・・・
黒尾さんが、そんなに思っててくれたのに・・・あたし・・・
「それで、俺…」
『…めんなさ…ッ!!』
「えっ…夜琉!?」
あたしは、知らぬ間に泣いていた。
あのストラップの意味はあたしが一番わかってる。大事な人に、1番って思える人にあげるものってわかってたのに・・・
『ごめんなさッ…あたし…、忘れて…ッ!!』
「…ッ、泣くな!!」
ベッドを軋ませてあたしのそばに着た黒尾さんは、両手で顔を覆って泣いているあたしを抱きしめた。背中を擦って泣くなと囁いてくれた。
「大丈夫だ…俺は怒ってない。こうしてお前と会えたんだから怒らねえよ」
『でも…ッあたじ…、黒尾さッ、うぇ…ふぇぇ…!!』
涙が止まらなかった。ショック過ぎて泣き止めなかった。
黒尾さんが慰めてくれてもあたしの涙腺は止まることをしてくれなかった
「夜琉…!!」
泣いているあたしの顔を持ち上げて無理矢理に目線を合わせた。黒尾さんの目は、とっても真剣だった。きっとあたしの顔は、見るに堪えないくらいぐしゃぐしゃだと思うのに・・・黒尾さんは目線を逸らせてくれない
「夜琉…ありがとうな、俺に…生きる意味をくれて…」
『ふぇ……?』
「お前は、俺に生きる意味をくれたんだ。お前に礼を言いたくてここまでやってこれたんだ。生きられたんだ。誰かを殺したいっていう曲がった感情を消してくれたんだ。」
『うぅッ…黒尾さん…』
「夜琉…」
あたしの名前をそっと囁いて、黒尾さんはあたしにキスをした。