第27章 黒猫の生きる意味
「えっ…」
「おいちゃん、優しい人だから…だから、死んじゃダメ!!」
わぁーっと大声で泣き始めたガキを、俺はおろおろしながら見るしかなかった。なんで急にこいつは・・・
「なんで、死ぬのがダメなんだよ…お前他人だろ?」
「…分かんない、でもダメ。死なないで…おいちゃん…」
顔をくしゃくしゃにしてガキは俺のもとへ歩み寄ってきた。そして、さっき蛇野郎に撃たれた腕にそっと触れた。
そうか・・・この傷が、ダメだったのか。
子供の頃って、大したことない傷でも「死んじゃう~」って泣いてる奴多かったっけ?それで俺のことを・・・
「…大丈夫、兄ちゃん死なねえから」
「…じゃあ約束、」
んっ…と、一度返した黒猫をまた俺に渡した。それを俺は今度はありがとうという言葉をつけて受け取った
「…絶対死なないで」
「…分かった、約束な」
「…うんッ!!」
涙目の顔を目一杯明るく見せてニカッと笑うガキの笑顔は、俺の心にないものをくれた。
それは、生きたいって感情。自由になりたいって感情
誰か大好きな人と幸せに・・・
子供にこんなに感謝することはないだろうと思った。こんなにも真剣に俺に生きてほしいと思ってくれる人なんて・・・
木兎・・・あいつは誰かを守る喜びをくれたけど、生きてほしいとは言わなかった。
だから、誰かに生きてほしいって言われるのは初めてだった。
・・・とっても嬉しかった。殺ししかしてこなかったから俺なんていつ死んでもいいって思ってたけど
「…ありがとな、ガキ」
「ガキじゃない!!」
「そうか、お前なんて言うんだ?」
思い切って名前を聞いてみた。
するとガキは、涙を服の袖で拭って満面の笑みで答えた