第26章 黒猫の戦う意味
「先代もなかなかの目をお持ちで私自身もそれなりに成果を上げてきた。だが…息子の力は桁違いだ。」
社長は、少し悔しそうに椅子から立ち上がって棚の上に置いてあった木兎の子供のころの写真を見ていた。そしてそれを見ながらまた話し始めた。
「光太郎は、その人間の本質を見抜くのがとてもうまい。相手を見ただけでその人間に宿る潜在能力、考え、善人か悪人か・・・。先月そのおかげで梟谷財閥が救われたんだ」
社長が険悪になった。
ひと月前、この親父さんは再婚をしようとしていたらしい。前妻が病気で他界してから夜会で知り合った女と結婚直前まで行っていた。
でも、挙式を目前に控えたとき突然木兎が「この女ダメ!!!」と言い始めた。最初はただの子供の戯言だと誰も信じなかったが、詳しく調べたらその女は梟谷と敵対している井闥山グループの幹部の女だった。
女は逮捕され結婚も完全に白紙となったが、計画をつぶされた井闥山は梟谷財閥社長の1人息子、木兎光太郎の暗殺を企てている。
そのうえ木兎はあの性格なため危機感がまるでない・・・だから・・・
「だからあいつの力をもう一度試すためと腕のいいボディガードを見つけるためにあのオークションに連れて行ったんだ。そしてあいつは君を見つけたんだ」
写真を置いて、社長は俺のもとへ近づいてきた。
そして、俺の肩に手を置いた
「黒尾君、光太郎を守ってくれ。…あいつの、友達として」
雇われた身の俺は、それを快諾するしかなかった。
友達とかはどうでもよかった。ただ、話の中に出てきた井闥山グループ。それは俺の親父からも聞いていた名だった。
そいつらを殺れるなんて・・・ッ!!
考えただけで身震いがした