第26章 黒猫の戦う意味
その一言が会場全体を騒然とさせた。
声を張り上げたのは、俺と同じか下くらいのガキだった。自分が座っていたであろう椅子の上に仁王立ちをして、ステージ上からでも分かるキラキラした黄色い目がすごくきれいなのを今でも覚えている
「おいおい本気かよ…」
「誰だ、あんなガキに1億なんて…」
「あれって、梟谷のご子息では?」
ざわつき始めた会場を宥めるために、司会者がマイクを取った
「えぇ、では…、9番は1億で売れました…」
司会者も予想外だったようで声が上ずって途切れ途切れの言葉だった。案内人もさっきまで俺達への扱いが雑だったのに1億の値がついた途端割れ物を扱うように俺への態度が変わった。
世の中はお金なのだと、改めて気づかされた
オークションが終わって、裏口に行くとあいつがいた。おそらく親であろう人とオークションの支配人と話していた。
「あっ!!」
俺を1億で落としたそいつが、俺に駆け寄ってきた。そいつは俺の手を握ってぶんぶん振り回しながら俺の顔を見てまたまぶしいくらいの笑顔をつくった
「ほら!!やっぱりこいつにしてよかったよ!父ちゃん!!」
振り返ったそいつの視線の先には、綺麗なスーツを纏った品のあるおっさん。金持ち間満載のおじさん
「そうか…だが、1億もかけるほどではなかったんじゃないか?」
「いいんだよ!!こいつが良かったんだから!!」
と、親父さんに言い返してまた俺を見た。そいつはよく見たら変わった髪型だった。なんというか、ミミズクみたいと言うか・・・
「お前、名前は?」
「…黒尾、鉄朗」
「黒尾か…、俺木兎光太郎!!!木兎って呼んでな?これからよろしくな!!」
嵐のようなそいつ・・・木兎光太郎は、俺の両手を持っていたくせに俺に握手を求めてきた。
俺はまだ信用してないから、少しおどおどしながらそいつの手を握った