第25章 生きてほしい
「お前…何してんだ!!!」
『ちっ…違ッ…!!!』パァン!!!
黒尾さんが怖い顔をしながら服のままお風呂場に入ってきた。するとあたしの左頬に痛みが走った。右手が掴まれたと思ったら風呂場の壁に押しやられた。
右手に持っていたカッターは瞬時に黒尾さんに取られてカッターは刃を出したままそのまま湯船に沈められた。
「何してんだって聞いてんだよ!!」
『や…あの…』
「答えろ!!!」
両手の押さえつけられたまま壁に追いやられたあたしに黒尾さんは怒鳴り続けた。
『うっ…ご…ごめんなさ…』
「お前…!!…俺を…、俺を生かしておいて!!何勝手に死のうとしてんだ!!」
『・・・ッ!!!』
服を着たまま流れ続けるシャワーの下であたしを怒鳴っていた黒尾さんの言葉の意味は分からなかったけど、それが彼にとってすごく大事なことだっていうことは分かった
黒尾さん・・・泣いてた
髪の毛ペシャンコになってて、すごく怖い顔をしてるのに・・・。涙声でシャワーに隠れて涙は見えないけど・・・
初めてだった・・・
叱られたことも、叩かれたことも・・・泣かれたことも・・・それであたしは、どうしたらいいか分からなくなった。
『…ッ……ご…ごめんなさ…、ごめんなさい…黒尾さ、ごめッ…ごめんなさいっ…』
混乱する頭は、あたしの涙腺と言葉を麻痺させた。
あたしの目からは、頭に降り注ぐシャワーのように流れ続け口からはごめんなさいとしか出てこない・・・
「頼むから…こんなこと、二度としないでくれ…」
それは、黒尾さんも同じだった・・・
2人で、風呂場の壁に寄りかかってただひたすらに泣き続けた