第20章 悪い子は、光の中で・・・
「…なんでもありません。では行きますよ」
と、手を取ったままあたしをさっきYUJIさんが向かった方へ歩き出した
赤葦さんに連れてこられたのは、たくさんのアーティストさんがいる控え室
キラキラした衣装を身につけている女性アイドル達。歌に合わせた奇抜な衣装を着ている男性アイドルなど、最近のテレビを賑わせている人達ばかりだった
「黒尾さんはあそこですよ」
と、赤葦さんが指さす方には確かに黒尾さんだった
黒尾さんは確か芸能マネージャーだって言ってたけど・・・
「あっ!!夜琉ちゃん!!」
『あっ!!日向さん!!』
こっちに大腕を振って走ってくるのは今大人気の男の娘アイドルの日向。
YUJIさんと同じくお客で来ていた(といっても月島さんの付き添いだったけどね)から顔見知りで結構頻繁にメールもしていた
でも実際に会うのはやっぱり久しぶりだった
「もぉ!!日向って呼んでったら~♡ってか何よその恰好、下着みたい!!アタシのドレスだったら貸すわよ?」
完全に男の娘アイドルモードになっている日向はどっちかというと女の子だった
『日向のドレスはあたしには似合わないよ~。ってか、日向も出るの?』
「もちろんよ♡アタシのCD売り上げはJOUZENJIに次いで2位って知ってるでしょ?」
『うん!日向が歌うの楽しみにしてる!!』
「うん♡ありがとう♡」
というと日向はあたしに背を向けて自分のほっぺをおもいっきり両手でパシンッ!!!と叩いた
『えっ…どしたの?』
「俺、舞台とか立つ前にこれやるんだ。気合の1発!!」
あっ…今、俺って言った
やっぱ本質は男の子なんだ
『でも、そこまでしなくてもいいんじゃないの?』
「えっ…だって、本気でやりたいのに全力出さないでどうするの?」
『えっ…』
冗談で言ったつもりだったが、日向のこの真剣な目にあたしはすっかり気持ち負けしてしまった
そこで初めて日向が好感度高いランキング3年連続1位の理由が分かった。この1回1回の気持ちの入れようが視聴者の心を掴むのだと・・・