第20章 悪い子は、光の中で・・・
「たしか…ここだな」
黒尾さんがぽそっとつぶやいた
そこは・・・〈Bスタジオ〉
『…?』
「あぁ~…やべえ、3分遅刻だ…」
黒尾さんが持っていた腕時計で時間を確認して大きな扉を開いた
その中には、よく歌番組とかでよく見る大きなステージ
観客がカラフルなペンライトを持ってて、たくさんの人が行き交っててごちゃごちゃしていた
「黒尾さん、おはようございます」
「あぁ…おはよっす。今どんな感じですか?」
黒尾さんが、スタジオに入って早々女の人に呼ばれてカバンから書類を確認していた
あたし…マジでなんでここに呼ばれたんだろう・・・
「ねぇ君~、可愛いね~。どこ所属の子?」
スタジオの入り口付近で呆然としていたあたしに声をかけてきた男の人がいた・・・
『えっ…あっ、いえ…あたしは、ただの…』
「あれ?…君、紫乃ちゃん?」
『えっ…あっ!!ユージさん!?』
「えぇ!?なんで…なんで紫乃ちゃんがここにいるの?」
それは、あたしの風俗で働いている時の最初のお客さんだったJOUZENJIのYUJIだった。
あれ以来、TVでは見ていたけど本人に会ったのは久しぶりだった
『あっ、あたしは…えっと…』
「ひょっとして俺の応援?うれしい~♪」
『あっ…いえ、あのYUJIさんはどーして…』
「どーしてって、これ今度やるMフェスの収録だけど、知らずに来たの?」
『えっ…Mフェス!?』
Mフェスは、毎年夏にTVで放送している〈ミュージックフェスティバル〉の略。その時々にヒットしているミュージシャンやアーティストが出演する人気の歌番組
「俺達ちなみにメインで登場なんだぜ?すっげえ楽しみだよな~」
『が…頑張ってください!!』
「ありがと~♡でも、紫乃ちゃんがキスしてくれたらもっと頑張れそうだな~」
YUJIさんはそう言いながら壁際に立っていたあたしに壁ドンなるものをしてキスを迫ってきた