第18章 岩泉の願い
ずっと信じていた及川さんが、自分を殺そうとしていることへの怒り
まだ信じられずにいる自分への苛立ち
信じていた人に裏切られたという悲哀
いつ殺されるか分からない恐怖
白鳥沢や紫乃さんのことに対しての気持ちの整理がつけられないことからの混乱
これからの生活への不安・・・
たった1日で起こったことなのにいろいろなことが重なり過ぎて、あたしのバカな頭では何も処理できなくなっていた
でも、泣くこともできなくて・・・
気持ち的にいっぱいいっぱいになっちゃって・・・
・・・もう限界だった
友達にも相談できなくて、信じてる人もいなくて・・・
「…そんなの、なんで俺に言わねえんだよ。」
『…グスッ…ぇ…』
「初めて会った時言ったろ?いつでも連絡して来いって。…それは、いつでも頼っていいってことだったんだぞ?」
涙でクシャクシャになっていたあたしの顔を両手で包むようにもってあたしの目をまっすぐ向く黒尾さん
その目は、いつもの胡散臭さはなくまっすぐで・・・優しい目だった
「…今誰も信用できないのは分かってる。でも…俺のことは頼ってくれ。岩泉に頼まれたからじゃねえ、俺は…お前を守りたいと思ってる。」
『…ん』
それでもあたしは、黒尾さんから視線を逸らして、溢れてくる涙を拭く。
黒尾さんが優しいのは知ってる・・・でも本当に?
ひょっとしたら黒尾さんもあたしの知らないことを知っててあたしを殺すんじゃないの・・・?
そう思えてならなかった
「・・・こっち向け」
と、あたしの顔を掴んでいた片方の手をあたしの顎に添えた
今度は、あたしの唇に温かさが広がった