第18章 岩泉の願い
岩泉さんを見送って、あたしはお店のカウンター席に座った
というか、立ってるのが辛くなった
「大丈夫か?」
『う…ん、なんかいろいろあり過ぎて…混乱してます』
「…待ってろ、帰る支度してくるわ。」
と、頭をポンポンして厨房へ入って行った
あたしは、すっかり減ってしまったアドレス帳を開いた
あ行とか行を埋めていた2人もいなくて、あ行は0人だった
『…。』
・・・なんか、寂しいな
・・・寂しいって何?あの人達はあたしを殺そうとしてるのに・・・
次会ったら死んじゃうかもしれないのに・・・
『…ッ。』
あたしは、念のために手帳にメモをしていた及川さんの電話番号に連絡しようとした
どうしても、及川さんの口から聞きたかった
「・・・ハイ没収」
『あっ!!』
「お前、岩泉がせっかく消したのに無駄にする気かよ…」
『…だって、及川さんに…』
「もうあいつのことは忘れろ」
と、及川さんの電話番号を書いていた手帳のページを破ってカウンターに置いてあったマッチで燃やされた
黒尾さんは、バーテンダーの恰好から移動するときの恰好に着替えていた。そして海さんにお店を閉めるように頼んでいた
「…じゃあ、行くぞ」
『…うちに帰るんですか?』
「お前んちは危険だから、俺んちに泊まれ。それ以降のことは明日決めるからな」
『…はぁ』
「黒尾、一応女の子だから気を付けろよ?」
と、海さんがにっこりと黒い笑顔を黒尾さんを見ていた
黒尾さんはアタフタするように何もしねえよ!と言ってお店を出た
『…海さん、ごちそうさまでした。…おやすみなさい』
「はい、またおいで。いつでも力になるからね」
と、海さんの優しい笑顔
その笑顔に答えるようにニコッと微笑んで店を出た黒尾さんを追った