第18章 岩泉の願い
「…チッ…あぁ、分ぁったよ!…こいつのことは任せとけ。大方の目星もついてるしよ」
「すまない…、じゃあオレ行くからよ」
と、岩泉さんは立ち上がってジャケットのポケットから財布を取り出した。テーブルの上に諭吉様を置いてお店を出て行こうとした
『あっ…あの!岩泉さん…』
あたしは思わず岩泉さんを呼び止めていた
まだ言いたいことがたくさんあった。あたしはこれからどうしたらいいのか、岩泉さんはどうするのか…及川さんはこれか何をしてくるのか・・・
でも、出てこない
聞くのが・・・怖かった
「・・・。」
そんなあたしを見て岩泉さんは、そっとあたしに近づいて頭をポンポンしてくれた
「…夜琉、お前はホントに紫乃さんに似ている。見た目もだけど、心意気もそっくりだ。」
『…でもあたし、紫乃さんみたいな…』
「…誰も恨まない…、あの人もそういってた。その優しい心が全く一緒だ。」
岩泉さんの顔を見ると、寂しそうだった
『…岩泉さん、あたしはどうしたらいいですか?』
「…生きててくれればいい」
ん~…と、あたしは唸って下を向くしかなかった
生きてればいいって・・・それでほんとにいいの?
すると、視界が急に暗くなっておでこに何か当たった
それは岩泉さんの額。岩泉さんはあたしのおでこに自分のおでこをくっつけて小さな声でつぶやいた
「…俺が及川をお前に近づかないようにするから…お前は幸せになってくれ。それが俺の願いだ、紫乃さんの意思だ。分かってくれるよな?」
その声がとっても優しくて、でも圧がすごくて・・・
あたしは・・・コクンと首を縦に振ることしかできなかった