第17章 天国と地獄
「・・・なんですか」
「…この先、何があっても…誰も恨まないで…何かあったら……4人で協力して生きて……」
「…紫乃さんがいないと、俺達…」
「もうみんな…あたしがいなくても…大丈夫だから…ね?…だから…」
――――――――――――――しっかり・・・生きて
それが・・・紫乃さんの最後の言葉だった
それでも、紫乃さんは死んだその瞬間もいつもの笑顔だった
「うっ…うぁ…あ゛ぁぁあぁぁああ!!!」
ついに花巻はのどが裂けるんじゃねえかってくらいの声を張り上げて泣き出した
普段クールな松川もそんな花巻を宥めながら泣いていた
トオルは・・・泣いていなかった
「…紫乃さん、やっぱ無理です」
と、トオルは紫乃さんの遺体を見下ろしながら立ち上がった
俺と松川は、そんなトオルの姿を涙ながらに見ていた
「…ねぇハジメちゃん、まっつん。俺が、あいつに…白鳥沢の奴らに復讐したいって言ったら…どうする?それでも、一緒に来てくれる」
「・・・。それは紫乃さんの願いに背いてもか?」
「・・・もちろん」
「・・・。」「・・・、別にいいんじゃねえか?」
そうやって言ったのは、松川だった
奴はいつもそうだった。トオルや俺・・・花巻のやることを後ろから1歩引いて見ている
俺達がやることにはあまり口を出さなかった・・・
「…ハジメちゃんは?」
奴が何をしようとしているのかは分からない
でも、俺はこいつとこの10年過ごしてきた。今更見捨てることはできなかった。
こいつの進む道が、たとえ地獄道であっても・・・
「…仕方ねえな、付き合ってやるぜ。及川」