第16章 幸せな時間
それから、2年後・・・
俺達は10歳になっていた
「ただいまー」
1年前から、紫乃さんは入院していた
その間、俺達4人が中心になってほかの子供たちを守っていた
「おかえりー!!」「おかえりなさい!!」
子供たちが紫乃さんを出迎えた
紫乃さんは、そんな子供たちと共に、ダイニングに入った
「紫乃さん、おかえりなさい」
「ただいま、あんたたちちゃんとご飯食べてた?1年も留守にしちゃってごめんね」
「大丈夫ですそれより、何してたんですか?」
松川がそうやって聞くと、紫乃さんが抱えているものが動いた
「あぁ、ごめんね。みんなに会わせたい子がいるの」
といって見せてくれたのは、小さな赤ちゃん
赤ちゃんは顔を赤くして指をしゃぶりながらきょろきょろしていた
「わぁ~可愛い」
「この子は?」
「あたしの子だよ」
「紫乃さんの?」
みんなが紫乃さんの手の中を覗き込んで赤ちゃんを見ていた
トオルが、赤ちゃんの頬に触れた
赤ちゃんは触れられた瞬間、ふにゃと笑った
赤ちゃんが笑うと、みんなが笑顔になった
「紫乃さん、この子も一緒に暮らすの?」
「…この子は、べつの親に託すの」
「えっ…」
「でも勘違いしないで。捨てるんじゃないよ。あたしの友達が子供ができない体質であたしもあんたたちを育てるのに必死だから、代わりに育ててもらうだけだから」
と、いつもの笑顔だった
それを見た俺達は、ちょっと安心したけど・・・
トオルだけは、その笑顔に違和感を感じていたみたい