第16章 幸せな時間
朝のアレがあってから、トオルはすっかり花巻と仲良しだ
花巻がよく抱いているぬいぐるみで遊んだり、しゃべったり、絵を描いたり・・・
「まるで女子だな…」
「でも、あんなに笑ってる花見たの初めてかも」
俺と松川は、ソファに座って2人やほかの子供たちを見ていた
こういう光景は見ていたけど、こんなに安心してみたことはなかった
「…松川っていつからここにいるんだ。」
「ここができた2年前から」
「へぇ」
「…お前たちは、親に捨てられたんだろ?」
松川は本を読みながら問いかけてきた
俺は、素直にあぁ…と答えた
「…親って、いろいろいるな…。」
こいつは確か、親の過剰な押し付けのせいで自分で逃げ出したんだっけ・・・
「…たしかにな」
「でも、紫乃さんは違う。あの人は、こんな俺達でも大事にしてくれたから…」
「…そうか」
松川は、顔つきこそ変わらないけど凄く嬉しそうだった
松川だけじゃない、ここにいる奴らみんな幸せそうだった
「…ここいいな」
「だろ?」
「そいや、紫乃さんってどんな人なんだ?」
「…紫乃さんは・・・」
紫乃さんは、ここにいるみんなに好かれてて優しくて料理もできて時々面白くて・・・
お母さんというよりお姉さんという存在らしい
「俺達にとって、すげえ必要な存在なんだ」
「・・・そっか」
それから俺達は、順風満帆だった
俺達2人は、花巻や松川と一緒に学校に通うことになった
8歳まで学校に行けていなかったから、それまでのことは松川に教えてもらった
・・・九九って難しい・・・
それから、ちょっと前に紫乃さんに教えてもらったバレーボール
それがめっちゃ面白くて4人でドはまりしてしまった
4人で少年チームに入って、トオルがセッター、俺と花巻がスパイカー、松川がブロッカーで最強チームをつくっていた
・・・まぁ紫乃さん曰く、まだまだ甘いひよっこだと言われたけど・・・