第16章 幸せな時間
「あの2人は特に闇が深いし、友達って呼べる存在も少ないの。だから…」
紫乃さんは立ち上がって俺達の前に立った
そして、俺達2人の頭を同時に撫でまわした
「あんたたちがあいつらの友達になってくれない?」
「友達…?」
「そ、ここで暮らしてあいつらやほかの子らとも友達になって頂戴。今日からあんたたちもここの家族だよ」
と、紫乃さんはニカッとまぶしいくらいの笑顔を見せた
そんな笑顔、久々だった
何の裏表もない、ただ純粋に喜びだけを現した笑顔
そんな紫乃さんの笑顔を思いながら、俺達は子供部屋に通された。松川と花巻と同じ部屋で、2段ベッドが2つおいてあった。1つは2人がすでに寝ていた
俺とトオルはじゃんけんをして、俺が上になった
「…ねえハジメちゃん」
「んぁ?」
「あの人は、信じていいのかな…」
「…多分な」
「・・・。」
返事をしたけど、トオルからの返事はなかった
すると、下にいたトオルが上に登ってきた
トオルは、何も言わずに俺の布団に入ってきた
「…なんだ?」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・へへ」
「なんだよ…気持ち悪いな」
「・・・俺、なんかうれしいよ」
と、布団の中で俺にしがみついていたトオルが急に笑い出した
俺もそれにつられて頬が緩んだ
あったかい布団で寝られるっていうことと、あったかいご飯が食べられて・・・
すごく幸せだった