第15章 地獄と天国
「…おい」
「何…これ……」
スラムに戻った俺達を待っていたのは、ほんの1時間前と全く違う場所だった
スラムのおっちゃん達は、降りしきる雨に打たれながら地面に横たわってる。塒という塒が倒れてグチャグチャになっててその下敷きになっているおっちゃんもいる
「おい…おっちゃん。何してんだよ…」
混乱する頭をフル回転させながら俺はおっさんの身体を揺する。でも、おっちゃんの身体はもう硬くて冷え切っていた
近くで倒れている別のおっちゃんも半分目を開けたまま口から血を流していた
「ハジメちゃん!!みんなが…みんながいないの!!」
俺から離れて奥に行っていたトオルが血相を変えて戻ってきた
トオルは、息を切らしながら奥にあった俺達子供の塒が壊されたけど、その中にも外にも誰もいない…死体もないと途切れ途切れに言う
こんなの・・・誰が・・・
「よぉ…お前ら、……生きて…やがったのか…悪運の…強いガキだぜ…」
「…!!…釣りのおっちゃん?」
雨の中で聞こえにくかったけど、小さな大人の声が聞こえた
それは、よく宝探しをしていた河原で釣りをしていたおっちゃんだった。その身体は、赤黒い穴だらけだった
「おいおっさん、いったい何が…」
「はぁ…おめえらも…よく知ってる奴らだ…また……金儲けのために……ガキ共をかっ攫って行った…」
「…まさか!!」
「あぁ…俺達も……アレの総帥に……ゲホッ!!」
おっちゃんは、話しをしながらどんどん息が上がっていく
声も細くなっていく
そして、何か言いかけておっさんはヒュッ…と息を吸って動かなくなった。おっさんが座る場所に赤い水が流れ出していた・・・
「ハジメちゃん…アレって」
「…スラムのガキを誘拐したのは、白鳥沢。前に近づくなって言ったあの大人。あいつらは、子供を誘拐して…売り捌いてる悪の組織だ…」