第15章 地獄と天国
ゴロゴロ…
1時間くらい経って空がいよいよヤバくなってきた
遠くで雷もなっていた
「おい、そろそろ上がるぞ!!」
「うん…って今日も岩ちゃん多いね…」
「当然だ、お前は高いモンばっか集めすぎんだよ」
「もぉ~…次は負けないから!!」
と言い争いながら俺達は川辺を後にした
「ねぇ、なんかすごいパン食べたいね…」
「…言うなよ、我慢してんだから…」
スラムに入る直前にトオルが急にそんなことを言う
俺達が通っていたあのパン屋のおっちゃんは半年前に病気で死んじまった。だから、あのパン屋はもうない
「・・・。」
「…ん?どした、トオル。もう雨降るから行こうぜ」
「・・・。」
トオルは、何かに怯えるように立ち止まったまま震えていた
「なんか…変だよ…」
「どした?」
「…なんか、人の気配が全くしない…だれも…いない…」
トオルのその言葉に俺は神経をとがらせる
・・・俺は、黙ってトオルの手を握ってスラムに入っていく
トオルの手は、降り始めた雨のせいかとっても冷たかった