第15章 地獄と天国
「じゃあとりあえずついて来いよ」
俺はトオルを連れて寝床に戻っていく
トオルは俺の後ろをきょろきょろしながら着いてくる
「…お前、どっから来たんだ?」
「…わかんない、お母さんにここで待っててって言われたんだ。でも、お母さんずっと帰ってこないから…」
典型的か
ここに来る子供の大半が同じような理由でここにいる
育てられなくなったから、ほかの男と子供ができたから・・・それっぽい理由を並べてここに置き去りにされてる
「ハジメちゃんは?」
「ん~、お前とおんなじ感じだ。でもお前よりココの生活長えからな。なんかあったら言え」
「…うん」
なんて話をしていたら、いつの間にか寝床に着いた
「おーい、飯だー」
と、塒に向かって声をかけると中から子供が数人でてきた
このスラムで生きている弟たちだ
「わーい!!」「ハジメ兄ちゃんありがとー!!」
俺がパンを持ってくると、ガキどもは喜んでやってくる
袋に入ったパンを俺は子供らに差し出す
全員に配り終えたら、俺達の番だった
でも、惣菜パンは子供らが持って行っちまうから俺はいつもフランスパンとかそういうモノばかりだった。
でも今日は運よく
「おっ、牛乳パンか」
「何…それ」
「牛乳パンだ。知らないのか?」
「うん…」
「じゃあ半分やる」
と、牛乳パンを半分ちぎってトオルに渡す
俺は弟たちのパンを食べる姿を見ながら牛乳パンを食べる
でもトオルはなかなかたべない
「おい、なんだよ。たべねえなら返せ」
「…ううん、俺…友達にモノもらうの初めてで…すごく…嬉しくて…それで…!!」
トオルは、目を輝かせて牛乳パンを握りしめていた
そんなに喜ぶかよ…って思いながら視線を外してパンを食べる
それ以降、トオルは牛乳パンを食べるたびにその時の話をするようになった