第15章 地獄と天国
「ありがとな、おっちゃん」
「あぁ…またおいで」
俺が6歳になってしばらくした時、俺はあいつに出会った
その日も、俺は顔見知りのパン屋のおっちゃんのもとを訪れていた
このおっちゃんは、花街とスラムの間の小道の脇に店を構えていて、金ができたらおっちゃんがあまりものを安く売ってくれていた
ちょっと前に、スラムのおやじ共がおっちゃんに突っかかっていたから助けた時からおっちゃんとは親しくなった
パンをもらいに行くのは、いつも夕方だった
そろそろ花街に光が灯ってまぶしくなる時だ
俺は、袋いっぱいにパンを担いでスラムに戻る
道を歩くと、おやじが横たわって寝てるしゴミは散乱してる汚い場所
でも、生き場がない俺達にはここにいるしかなかった
「―――…ん…うぇ…―——ん」
裏道を歩いていると、どこからか泣き声がした
聞いたことのない声だったから、新人かと思って声を頼りに探してみた
少し歩くと、ゴミ箱の影で子供が泣いていた
まだ小綺麗な子供だった
・・・あれは、女か?
「おいおい~、何してんの~?」
俺より先にそいつに話しかけたのは、スラムのおやじ達だった
おやじって言っても20代のバカな兄ちゃんたちだ
「こんなとこに居たら、危ないよ~。可愛い子ちゃん」
「うっ…ぅ…まっ……ママわぁ…?」
「…ブハッ!!ママだってよぉ~」
「このガキ捨てられたのかぁ~?」
大人のくせに汚ねえこと言いやがって・・・
俺は見るに堪えれなくなりそいつらに近づいて行く
「おいこいつ、顔可愛いから…売ったら金になるんじゃね?」
「だな…特に白鳥沢に売れば結構な…」
「おい、何してんだ。そいつから離れろ」