第13章 白鳥沢と青の野望
もう白鳥沢から歩いて結構経ってしまったから引き返すのも無理だし、誰かに電話したいけど・・・あたしのスマホ、青城の人が大半だし、日向や月島さんはきっとお仕事中だし・・・黒尾さんは・・・相変わらず未読
『…どうしよう』
怖くてどうしたらいいか分からなくなっていた
ずっと信じてた人が、自分を殺そうとしてたということ
会ったこともない女の人が自分の母親だって言われて
その人は、白鳥沢の継承者で・・・
『…もう、訳分かんない…』
あたしは、その場に座り込んでしまった
周りは閑静な住宅街で夕方6時になりそうだからまだ人通りは多くない
だから、見つけてくれる人もいないだろうと思って・・・
・・・また寂しくなった
『……。グス』
あたしは、久々に泣いた気がした
お父さんやお母さんが死んだとき、あたしは泣かなかった
悲しくないわけじゃなかったのに・・・
きっとあの時は、よかったね…って安心した気持ちだったからだ
でも今は誰もそばにいないっていう孤独感と、不安と混乱が溢れてしまっていた
誰かにそばにいてほしい・・・
そう思っていた・・・
すると、後ろから車が走ってくる音がした
あたしは急いで道の脇に逸れた。泣き顔を見せないように道の脇の塀の方を見て目の周りを拭った
車は、あたしの横を通りすがって行った
でも、急にブレーキ音がしたと思ったら車から誰か降りてきた
「…夜琉?」
一番会いたくない人の1人だった
あたしのことを、殺そうとしてる人達の・・・中心であろう人
『…い、岩泉…さ…ん』