第12章 黒猫の遊戯
「うぃー。」
「はいお疲れ~」
フロントに行くと、今日は松川君と・・・
あいつがいた
「あっ、クロくん。久しぶりー。」
「よぉ、及川。相変わらずウザい顔してんな」
「ナンバーワンホストに向かってそれはないでしょ!?」
いつもの光景だ
俺の戯言に一喜一憂するこいつは、ここ数年で仲良くなった
俺が経営するあのバーによく来るから嫌でも会う
それまでは、俺は別に及川のことは嫌いじゃなかった
人当たりもよくて面白いし話も合う
でも、今では俺はこいつに対していい感情を抱いていない
「…セックス以外はしてないんだな。じゃあ2時間で20万な」
「あぁ~、夜琉ちゃんとヤったんだ。どーだった?」
ニヤニヤと笑いながら俺の肩に手を回してその模様を聞いてきた
昔ならそんな行為も軽く流して答えるけど、今は何も答えない
「あぁ、夜琉?あいついいよな~。胸デケえし結構感じやすいし」
フロントのソファから顔を覗かせてきたのは花巻
こいつも夜琉とやったのか・・・
「・・・。なぁ及川、ちょっと聞きてぇことがあるんだけどよ」
「ん?何?」
「…夜琉って、いくらだ?」
及川を向いて俺の中で一番の笑顔で言う
その場にいた誰もがきょとんとしていた
「えっ、今夜琉ちゃんとヤったんでしょ?」
「あぁ、ヤった。」
「やったなら分かってんだろ?1時間10万って…」
「そういう意味じゃなくて・・・」
オーナーである松川の言葉を遮って、俺はもう一度及川に向き直す
そして、俺は改めて今度は分かりやすく言ってやった
「あいつ、夜琉はいくら払えば俺にくれるんだ?」