第11章 白鷲の帝王と及川の秘密
梟谷の社長さんの家を出て及川さんの愛車のG〇-Rが首都高を走っていた。
助手席に座るあたしは、ナイフを掴んで真っ赤になっている右手を見ていた
赤黒くなっていた手の平はもう固まりかけていた
「・・・手、大丈夫?」
『…はい』
運転席に座っていた及川さんが沈黙を破って話しかけてきた
岩泉さんや国見さんは、先に京谷さんと帰ったみたい
G〇-Rは金田一さんが持ってきてくれたみたい
あたしはとりあえず、今日は1人にするのは危ないと言われたから及川さんの家に泊まることになった
「…なんであんなに怒ったの?」
『…傷をつける男は、最低だって…お母さんが…。』
「…それで今までの客もキスマークは拒否してたの?」
『はい…』
「…でもね、キスマークは好きな人に自分のだって証明を付けるためのモノなんだよ?」
『…でも、傷ですよ?』
「…キスマークは違うの。夜琉ちゃんも好きな人ができたら分かるよ」
『・・・?』
「…でも、もう危ないことしちゃだめだよ。怒ったからって夜琉ちゃんが傷つくのはもう見たくないし…」
そこまで言ったら、及川さんは何も言わなくなった
首都高の街灯が照らす及川さんの顔を見ても、何も言ってはくれなかった