第11章 白鷲の帝王と及川の秘密
『痛ッたい!!』
「ほら、早く若利君のとこ行くよ」
『嫌です!!離して…痛い!!』
暴れると余計にあたしの手を握る力を強くされる
あたしの手を握る天童さんの指の隙間からもあたしの血が流れていた
「ほら…行くよ」
『やっ…やだッ…!!』
「・・・待てよ」
と、きっとさっきの銃弾をよけていた及川さんがトイレの個室から急に現れて天童さんに殴りかかった
天童さんはあたしから手を離してトイレの奥の壁に身体をぶつけた
天童さんは低く唸って殴られた頬を抑えた
「夜琉ちゃん!!」
及川さんは手を差し出した
あたしは、右手に持っていたナイフから手を離して及川さんの手を掴もうとした
でも、及川さんは手の平は掴まずあたしの手首を持った
「夜琉ちゃん、なんであんな無茶を…」
『だって、あの人…』
「話はあとで聞くから、今は走って!!」
と、あたしは及川さんに腕を引かれながら広い廊下を走っていく
でも、手首を掴まれているはずの右手が、なんだか異常に痛かった
それは、及川さんがあたしの手首を強く握っているからなのか・・・
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「…おい、生きてるか?」
「痛ってぇー…及川君ってば本気で殴るんだもん…」
「ったくお前は、女一人も攫えないのか?」
「いやいや、だってさびっくりしちゃったんだもん。あの子急にナイフ掴むんだよ?凄いよね~」
「その気性の強さも若が好む理由の一つなんだろ」
「ふーん…」
英太君の話を軽く聞き流しながら彼女・・・、夜琉ちゃんの血が付いたナイフを拾い上げた
ナイフだけじゃない、俺の手についていた赤い血・・・
それに俺はひどく興奮してしまった
ペロッと手に着いた血を舐めたら、それのなんと甘いことか・・・
あぁ~、なんかやばいな~
及川君にも、若利君にも・・・
渡したくなくなっちゃった・・・