第11章 白鷲の帝王と及川の秘密
「天童よせ」
牛島さんの低い声が聞こえた
さっきまで意地悪してきた天童さんが大人しくなってスマホを返してくれた
『あっ…どうも』
「お前、名前は」
『えっ…天川夜琉』
「そうか、では夜琉。お前は俺の嫁になってもらう。結婚を前提に付き合ってもらう」
『・・・は?』
牛島さんの口から出た結婚という言葉
あたしの頭の中がぐるぐる回ってた
『あの…なんで?』
「知らないかもしれないがお前は白鳥沢の元総帥の血を継いでいる」
『は…?えっ…あたし白鳥沢組ってさっき初めて知ったんですけど…あの…あたし帰ります…』
テーブルの上に自分のバッグがあったのを見つけたあたしは、牛島さんの脇を通ってバッグに手をかけた
でも、その手を牛島さんに掴まれた
「俺はお前と結婚しなければならないんだ。」
『あたしは結婚しないといけない理由が分かりません、それに自分が白鳥沢の血縁なんて知らないです!!』
牛島さんの手を振り払って部屋を出ようとした
でも、扉の前にはオレンジ髪のお兄さんと天童さん
「逃げないでね?」
『…お断りします』
と、あたしはお兄さん達を睨んでバッグの中に入っていた菅原さんにもらったお高い香水を天童さんたちの足元に投げつけた
パリンッと音を立てて割れた瓶から飛び出た薄いピンクの液体があたりに飛び散って強く甘いにおいを漂わせる
「うわくっせ!!」
お兄さんたちは匂いに驚いて扉の前から退いた
その隙にあたしは猛ダッシュで部屋を出た
「…天童、連れ戻せ」
「へいへーい」
「…やはり、あのような女を白鳥沢の嫁にするのは…」
「だが、彼女はあの方の子だ。手に入れなければ…」