第6章 救世主
どのくらい経っただろう。
しばらくして、耳元から感じる感覚がなくなった。
そのままどちらも会話がないまま沈黙していた時、彼の冷たい手が私の頬にそっと触れた
『ぁ…っ…、』
触れられただけなのに、少し冷たいだけなのに、
ただそれだけのことでさえ、ヒートのせいで変な声が嫌でもでてしまう。
早く薬を飲まないと、わかっていても、彼がそれを渡してくれる様子はない。
どうしようかなんて悩んでいるうちに、彼の唇が、私の唇へと近づいてくる。
抵抗することさえ出来なくて触れそうになった時、
勢い良く扉が開く音が聞こえた。
あぁ、どうしよう。
先生かな、それとも全然知らない他学年の人かな。
同じクラスの人だったらどうしよう。
こんなところ見られるなんて__________
「おいっ!お前何してるんだよ!」
終わったな、なんて思いながら閉じた目を開けて、声のした方へとゆっくりと視線を向ける。
それは聞き覚えのある声で……
『…しょ、ぅ…よう…?』
視線を向けた先にいたのは、私の唯一の幼馴染みである日向翔陽。
この状況でいえば、私にとって彼は救世主に見えた。