第3章 記憶
ここはー。
目を覚ますと、そこには見慣れぬ天井があった。
私は何をしていたのだっけ…。
「お、目が覚めたかい?」
茶色のボブカットの人が話しかけてきた。
私は起き上がろうとしたが、
「ーいたっ!!」
「あーダメだ、じっとしてな。あんた重症患者だったからね…。出血多量で、あともう少し運ばれるのがおそけりゃ、間違いなく死んでたよ。」
ああ、そうだ私…。たくさん怪我してて…。
でもあんな怪我私どこで…。
「ところであんた…、名前はなんていうんだい?」
名前…。私の名前…。
記憶の箱を探ろうとしてハッとする。
そうだ、私…。
「記憶が、ないんです…。」
「え…?」
「自分が誰か…何をしていたのか…この怪我も、どこでこんなことになったのか、全くわからないんです…。」
その時、ボブカットの人の向こうにあるドアがパッと開いて、一人の男の人が入ってきた。