第2章 偶然
与謝野先生の治療の間、私は彼女の荷物を勝手ながら漁らせてもらった。
彼女は手持ちの小さな鞄を持っていた。口の小さい、女性らしいデザインだった。
身分証明書のようなものがないか、何より私が探している物は、彼女が何者なのか、確認できるような証拠だ。
彼女の顔を見て、ハッとした。
偶然にもほどがある。
本当に彼女だと信じてもいいのかー。私はとにかく確信できるだけの証拠が欲しい。
鞄のなかでごそごそと動く私の手に、何か硬いものが当たった。
USBメモリー?
急いでノートパソコンに繋げると、驚くべきものが目に飛び込んできた。
ー間違いない。
この女性は、中也が先日探していた女性だ。