第21章 お礼をさせて
「そうだ、またテスト勉強手伝ってくれたお礼に何かさせてくれ」
日代君が家に向かう傍ら、そんなことを言う。
「え、そんな!大したことないから別にお礼なんて!」
そんなことを言いながら、心の奥で喜んでいる私が、もっと素直になりなよ、と語りかけてくる
でも大したことをしていないと思ったのは本当なので少々気がひける
「俺にとっちゃ大したことなんだよ。それともなんだ、俺に礼をされたら嫌か?」
そんな寂しそうな顔でこちらを見ないで欲しい
自分がとても悪いことをしているような気がする
「そ、そんな!そういうわけじゃないんだよ」
「じゃ、決まりな。何して欲しいか考えとけよ。思いついたときに言ってくれたら良いから」
笑顔で私の頭に手を載せてくる日代君。
一気に体温が上がった気がした。
ヤバイ、顔が見れない。
思わず少し俯くと、日代君が顔を覗きこんでくる
「お前、随分と赤いけど、熱でもあんのか?」
手をそのまま額に移そうとした彼の手をとっさに掴む。
これ以上何かされたら死ぬっ!
「だ、大丈夫だよ。ほら、夕日のせいだから。」
日代君は納得いかないのか、何か言いたそうだったが、それ以上言及してこなかった
苦し紛れだったよね。
でもなんとか逃げ切ったし、と心から夕方だったことに感謝した
そうこうしているうちに、自分の家が見える。
ちょっと待って。日代君の家、知らないけど、絶対こっちの方向じゃないよね?
隣を歩いている日代君に話しかけようとしたら、
「じゃあ、俺こっちだから。じゃあな。また連絡しろよ」
と私の頭をワシャワシャ撫でて、私の家の前を通りすぎていく。
前見送ったとき、そっちと反対方向で日代君帰ってたよね。
日代君は何でこんなに優しい人なんだろう。
日代君の優しさの訳を知りたい
遠のく彼の背中を見つめながらそう私は考えた