第21章 お礼をさせて
「あ、やべぇ。もうこんな時間か。」
店内の壁に掛かっている時計は、夕方の5時を示していた。
「え!ごめん。用事あったの。」
確かに日代君は暇人だとは言っていたけれど、用事がないとは言ってない
「そろそろ帰らねぇと晩飯が遅くなるからなぁ。」
そういや日代君料理できるもんね。
「家のご飯つくるのは日代君の役目なんだね。」
「そうだな。最初は慣れなくて大変だったけど、だんだん面白くなってきてよ、最近なんか仕込みの面倒なやつもついつくっちまうんだな。」
「すごいね。私だったら面倒に感じて簡単なのしか作らないも」
私は素直に感心しただけなのだが、日代君は随分と照れていて、顔が少し赤い。
かわいい、と思うのは好きになったからだろうか
「つくんのは大変でも妹が喜んでる顔を見ると、ますます張り切ってつくっちまうから、だんだん作るもんのグレードが上がってくんだよな。」
「何かもう、日代君お嫁に行けそうだね」
冗談めかして言うと、日代君大笑いした
「確かにそうかもな。でもこんな厳つい嫁、誰がもらってくれるんだろうな」
私なら喜んで、と頭のなかで思ったが、少し恥ずかしくなる
「まぁ、そのうち見つかるって!」
「とりあえず男じゃなくて相手は女がいいな」
日代君は苦笑いしながらそう言った