第17章 俺に教えて
そして日曜日。私は日代君と一緒に勉強するために、図書館の前にいる
それにしても遅いな日代君…
十五分前に来るのが癖だと言っていた彼が、逆に十五分遅れているなんて。
何かあったのかな。連絡した方がいいのかな。
スマホを取り出してメッセージを送ろうとしたとき、慌てて走ってくる足音がした。
日代君だ!
なぜ顔も見ずに気づいたのかが不思議なところだが、確かに彼だった
「悪い!こんなに遅れちまって…」
彼の額には汗が滲んでいた
「大丈夫。それより日代君、大丈夫だったの?」
どうやらここまで来るのに全力疾走だったようで、はぁはぁと荒い息を肩でしていた
「だ…、大丈夫だ。」
日代君は背負っていたリュックからタオルとペットボトルを取りだし、汗を拭いたあと、水を一気に飲んでいる
相変わらず用意周到だ
「何かあったの?」
私は彼にしては珍しく慌てているので、思わずそう聞いてしまった
「俺の髪、やっぱ目立つじゃねぇか、そんで街中歩いてたらよ、チンピラに声かけられちまって。めんどくせぇから走って振り切った」
んんん…。それはお気の毒に
「お疲れ様。とりあえず中に入る?」
「そうだな。」
私たちは並んで図書館に入った。司書の人が日代君の頭を見てぎょっとしていたが、彼は慣れているのか気にせず自習コーナーに向かう。
周りの人の視線が、彼に向かっている
好奇な目、嫌悪感が露な目…。
人と違うことをするってことは、人からいろんなふうに注目されるんだな…。
私もたしかに最初に彼に会ったときは恐がっていた
きっと優しい彼なら、みんなの視線がどういうものか、そして私が恐がっていたことも気づいていただろう
でも、人に反感を持たれながらも、自分の意思を貫く彼はとてもかっこいいと思う。
彼は自習コーナーの一番端の席を選んだ。
きっとこれは、私までがそういう目で見られないよう、目立たない場所を選んだんだろうな。
こんなにも無条件に優しい彼を見て、私はたまに泣きたくなる。みんな、お願いだから、見た目だけで彼を決めつけないで、と
私が長い間黙っていたからか、
「ん?どうかしたか」
と囁くように彼が尋ねてきた。
「うんん、なんにもないよ。じゃあ勉強しよう」
私は席につき、勉強道具を取り出した