第15章 彼のことを教えて
「日代さんは俺たちにとってヒーローなんです。」
中島君の言葉と、私の思っていたことが一致していた。
「中島さんは昔、すげぇ真面目で、いじめられてたもんな。」
確か委員長とかもやってたんだぜ、などと周りの男子が次々に口を出す
「今じゃもう面影全く残ってないんすけどね」
と、照れた顔の中島君
「俺も日代の兄貴にはずいぶんと世話になった。俺もいじめられていたときに、助けてもらったし」
と、確か村上君という少年が話す。
「俺が入った頃は、まだ日代の兄貴の前のリーダーがしきってたんだけどよ。その人も日代兄貴みてぇな人だった」
じゃあ、その人は日代君がお世話になった人か
「でも、日代の兄貴はただ優しいわけでもねぇんだ。もし俺らが他の族と喧嘩することになるとするだろ?そんとき、俺らが悪いことをしていたら、日代の兄貴は助けてくれねぇんだ。自分が悪いことをしたなら、責任は自分で持てってな」
「そうだったな。自分にも他人にも厳しい人だ。でもそのあと俺らが帰ってきたら、傷の手当てとかしてくれるんすよ」
俺もしょっちゅう手当てしてもらいましたね。今はその役目は俺がしてますけど。と続ける中島君
「でもよぉ、兄貴も不憫だよな。あんな事起きたらそりゃ引退するよな…」
「あんな事って?」
私の問いに、村上君は明らかに口を滑らせた顔をした
知らない人は触れてはいけない事なのだ。私が知りたいと思い、彼が話してくるなかった過去についての重要なカギ
周りの男子もシンとした空気になる
「まぁ、その事は置いといて、日代さんの武勇伝について話しましょう!」
と、日代君が、どこの族と闘って勝った、とか、酔っぱらいに絡まれていた女性を助けたなどとの話に移っていった
触れてはいけないことなら無理には聞いてはいけない
きっとこれは彼が私に話してくれるのを待たなければいけないんだ。
もっと友達として長い間関わって、信頼されて話してもらえる事なんだ。
それにしても、彼らは、底抜けに明るい。
もっと恐い雰囲気の人たちかと思っていたが、見た目だけで、結構ひょうきんな人たちだ
日代君はどうしてこんなにも優しい人たちの中から抜け出たのか。それを早く聞ける仲になりたいな