第15章 彼のことを教えて
日代君の過去はここまでばらしてもいいのか、と思ってしまうぐらい語り尽くされたが、みんなが意識してなのか、暴走族に入ったいきさつや辞めた事情は全く教えてもらえなかった
実はこの暴走族は免許を持っている人しかバイクの運転をしてはいけない、というルールがあるとか
あとは日代君が暴走族の先輩に間違ってお酒を飲まされてしまったが、平気な顔して飲み続け、先輩が倒れてしまったとか
どうやら基本は、違法になるようなことはせず、髪を染めたりピアスを開けたりはしているものの、みんな授業もちゃんと出ているらしい
ルールを守る暴走族。何だか不思議な気もする
緊急のとき以外はバイクの出すスピードも守っているらしい
周から聞いていたred crashのイメージとはかけ離れていて驚いた
もっと恐くて、無法者で、暴力的だと言われていた
でも彼らは、根は真面目で、友達のために闘い、強い人達だ。暴力が良いわけではない。ルールを守らないのが良いわけではない。けれど、人間として最も大事な何かを守っている気がする
あの彼のように。
「俺、日代さんにリーダーを任されたとき、めっちゃびっくりしたんっすよ。自分みたいな、不器用なやつでいいのかなって。でも、日代さんに認められた気がして、同時にものすごく嬉しかったんっす」
中島君がニコニコ笑っている。中島君にも、日代君とはまた違う、何か人を惹き付ける魅力がある。
日代君はきっとそれを見て彼を選んだんだろう
「人選に年齢は関係ねぇ。俺は高校3年生だしな」
俺は頭に血が上りやすいから、中島みてぇな冷静なリーダーがいてくれて助かる、とその人は豪快に笑った
「でも先輩の勇ましいところは俺、尊敬してます」
中島君が答えた
何か、家族みたいだな。
こんなに暖かい場所があるなんて。
彼はどうしてここを去ってしまったんだろう。何度も思い返したことがまたしても頭に浮かんだ