第13章 お出かけ
二人ぶんのチケットを購入し、映画館の中に入って、指定席に座った
まだ開始まで時間があるので、館内は明るい
「今回の映画は確か今人気のやつだよな」
「あれ、日代君知ってるの?」
日代君には非常に申し訳ないが、今日観る映画はバリバリの恋愛ものだ
「おう、クラスの女子が騒いでいたり、広告で見かけるからな」
そっか、日代君の周りにも女子はいるんだよね。何だか基本男子と絡んでいるイメージがあるから、その事を考えるとなかなか新鮮だ
「日代君は好きな子とかいないの?」
「いない、な。てか、今作ろうとか思ったことがねぇ。何か家族と友達を大事にしようとするのに一杯一杯って感じだな」
「何か日代君らしい答えだね」
確かに、現に私がこの前さらわれてしまったように、友達でもなにかと問題が起こるのだろう
傷だらけになってまで友達を守るのだから、あまり余裕はないかもしれない
「何か俺、不器用なんだな。1つのことを守ろうとすると、他のことが全く見えなくなる。」
日代君の声のトーンが少し暗いと思うのは気のせいだろうか
「そんなことないよ」
私の言葉に弾かれたように私を見る日代君。いつもより近い距離で日代君の目を合わせることができ、その上真剣に話したいので声に力が入った
「全部守ろうとして、中途半端になるより、大事な人を一途に守るのはいいことだと思うよ。そりゃ、全部完璧に守れたらそれは一番いいんだろうけどね。でも、日代君が守りきれないものは、絶対友達が一緒に守ってくれるよ。もちろん、私も力になるよ」
日代君が驚いたように口を少し開けたまま、私を見る
「ずいぶんと、勇ましいな」
「友達のためならね」
私はにやっと笑う。その時、周りの明かりがフッと消えた
もうすぐ映画が始まるようだ
周りが暗くなって良かった
随分臭いことを言っていたから、絶対に顔が赤い
顔が隠せて好都合だ
「宮原」
「何?」
「ありがとな」
たいしたことないのにな。私はどういたしまして、と答えておく
なぜ彼がこのときそう言ってきたのか、私は随分後になるまで知らなかった