第11章 ご対面
一通り手当てを終えて二人が部屋から出てきた
「日代君、ご飯まだでしょう、うちで食べていかない?」
「いや、すんません、俺家に帰ってやらなきゃなんねぇことあるんで、今日はこの辺で帰らせてもらってもいいですか。」
「そっか。残念ね。じゃあ、また次の機会に家に来てくれない?」
どうやらお母さんは日代君が気に入ったようだ。
「また、俺とバイクの話でもしよう」
あんまり口に出して言わなかったお父さんだけど、その一言で、気に入ったことがうかがえた。
「はい。なら、またお邪魔します。」
日代君が玄関に向かうのを私たちは見送るためについていく
「お邪魔しました」
日代君が頭を下げてドアを開けたその時
「日代君。」
お父さんが唐突に声をかけた
日代君がふりかえる
「君がもしろくでもない不良だったら、すぐさま君を追い出したかもしれない。でも君はマナーもしっかりしていて、大人への礼儀も忘れない。俺は子供の頃ふざけたやつだったから、君のことを本当に尊敬するよ。肩書きやら見た目のことで、何か言われるかもしれないが、娘と友達でいてくれはしないか。」
日代君が目を瞬かせる。唐突に私たちの話になったので、私も驚く。そういえば私達って友達なのかな?
そんな曖昧な関係。
「日代君は今日のことを申し訳なく思っているようだけど、君のような経歴を持つ人なら関わる人は誰でもリスクを負う。それはしかたのないことだ。気にするなと言われても無理だろう。でも、娘が君を心から信頼しているようだ。せっかく知り合いになったのだから、このまま仲良くして欲しい」
高校生にもなった私達の交友関係に口出しするのはいかがなものか、と一瞬考える
日代君がその時ゆっくりと口を開いた
「確かに、もしかするとまた迷惑をかけるかもしれないと思い、もう明日からは一切関わりを切ろうかと最初は思ってました。それが彼女のためだからって。でも、そんなん、俺の人生が終わるまでわかることではないですよね。俺は宮原さんのこと、もっと友達として知りたいと思っている節があります。今までなら友達の関係も無理矢理断ち切ったりしていましたが、もう、族もやめたので、新しい生き方をしてもいいんですよね。」
日代君は少し寂しそうに笑った