第10章 HERO
「俺は…、当然のことをしたんだ。だからお礼は言わないでくれ。俺がもっと気をつけていれば宮原が目をつけられることなんて無かったんだ。だから、すまん」
日代君は私をおぶりながら言う
何故そうなったかというと、私が立ち上がろうとしたとき、長時間座り込んでいたから、足が痺れていて、倒れそうになったからだ
彼の広い背中を見つめながら私は思わず反論してしまう
「日代君はね、私に構わないでいることも出来た。あの人たちのことなんて気にせずに、いつも通り家に帰って過ごすことも出来た。でも、ケガする可能性だってあるのに、昨日知り合ったばかりの私を助けに来てくれた。俺のせいとか誰のせいとか関係ない。私を助けに来てくれたことは、感謝させて欲しい」
勢いで一気に喋ってしまった…
「いつ知り合ったとか関係ねぇよ。俺が助けたいと思ったから助けた。それに俺の過去のことにお前が巻き込まれてしまうなんて見過ごせなかった」
日代君がポツリと言う
その時工場の出口が見えた
「もう、外真っ暗だね…」
まだ4月だからこの時間帯だと暗い
「そうだな。宮原、立てるか」
バイクの近くに来て日代君が尋ねる
「うん。」
私は日代君の背中から下りた
「宮原の家はどこだ?送っていく」
「大丈夫だよ。一人で帰れるし、この様子だと家から近そうだし」
はあ、と日代君がため息をつく
「そんなこと言って。もし今から何か起こってもお前、走って逃げれんのか?」
うっ…。
「ここらは夜になると不良がうろつきまくる。ただえさえ女子なのに、昨日の俺たちを見ていたやつらがあいつらだけじゃなかったらどうする。」
「…じゃあ、お願いします」
日代君は少し笑う。
何がおかしいんだろう…。
「じゃあお前の家の近くでおろす。俺が家まで行ったら親もびっくりするだろう」
確かに。日代君のバイクの騒音と、赤い髪を見たらびっくりするかもしれない。
でも、みんな日代君に会いたがってたけどな…
そう考えているうちに日代君はヘルメットを私に渡してから後部座席に乗せてくれた
その時、工場の近くの電灯がポツポツとつき始める
その白い光に私たちが照らされたとき、私は思わず息を飲んだ