第10章 HERO
「日代君!!」
「どうした。何かあったか?」
日代君が不思議そうな顔をして私を見る。
「ケガ…。それ、酷そう…」
暗い工場の中ではきずかなかった腕の傷
ワイシャツを捲ってさらけ出された部分が、血だらけになっていた
思わず顔も確かめる。時間がたったからか、最初はたいしたこと無さそうな傷だったのに、いつの間にかアザになっている
「大丈夫だよ。不良同士の喧嘩だとこれくれぇのリスクはある」
日代君はフッと笑った
でも腕の傷は絶対あの銀髪の男が持っていたナイフの傷だ
喧嘩なんてしたこと無い私でもわかる
こんなの殴っただけではできない
「大丈夫だとしても、痛いでしょ?それに後で化膿とかしたら…。日代君、私の家に行こう。私の家なら消毒とかあるから。」
「え、いいって。俺みたいなのが押し掛けても迷惑だろ」
予想外の展開だったのか日代君があわてふためく
「だって、ドラッグストアより私の家の方が近いよ。だってここからだいたい徒歩で10分位だから」
「あ、案外近いな…」
明るくなって周りを見たら、見覚えがある場所で、小さい頃近くを通った記憶がある
「お前はいいのかよ。親に俺みたいな知り合いがいるのを知られて」
「本当に見た目通り根っからのヤンキーで、暴力好きで、性格悪かったら嫌だよ。
…。でも、日代君はそんな人じゃ無いからいいの。もし親になにか言われても、理解してもらうまで話す」
日代君はしばらくの間黙っていた
「ごめん、何か気にさわること言った?」
「いや、何か嬉くってよ。知り合ってからたった2日しか経ってないのに、こういうふうに言ってもらえるなんてな。やっぱり暴走族やめてからもこの見た目でしょっちゅう嫌な目で見られるから…。見た目だけで決めつけない人がいてくれて嬉しい」
日代君は照れてるのか、口元を手で隠す。
何だか年相応の反応が見れて、かわいい
見た目はこんなんだけど、女子力あって、優しい彼を世間の人たちにちゃんと知って欲しいな