第10章 HERO
傷だらけだったけれど、元気な笑顔を見せてくれて、私はホッとした
「ちょっと待ってろよ、今縄外すから」
日代君は後ろ手で縛っている私の手首の縄をはずそうとする
距離が近いから、少し緊張した
変だな。昨日なんて日代君の腰に手を回して、もっと距離近かったのに
私が顔を完全にあげようとしたら、縄を外そうとやっきになっていた日代君が急に私の顔を日代君の肩へと押し付ける
「見んな、周りグロいから」
「う、うん…」
私が沈黙するのを見て、日代君は急に自分のしたことを自覚したらしい
「わ、悪い!汗臭かったか…」
いや、そっちの方を心配したのね。
この人、完全に私のこと女の子としてみてないや。
まぁ、男の子より女子力無いもんね…
昨日のことを思い出して、少し落ち込む
とりあえず、私も日代君のことあんまり意識しないでおこう
「ん、外れたぞ」
「ありがとう。」
縄がほどけたのと同時に自分の緊張と涙腺も緩んだらしい。ちょっと涙が出た
「お、おい。どうした。縄ほどくの痛かったか⁉」
私の様子を見て日代君があわてふためく
もっとクールな、人かと思っていたので、その反応を見て少し笑ってしまう
泣きながら笑っているので日代君はますます混乱しているようだった
さっき日代君に笑顔を見せてもらって私はすごく安心した
だから、日代君にも私は大丈夫だと安心してもらいたい
私は涙を拭って、今笑える精一杯の笑顔をみせる
「日代君、助けてくれてありがとう」
私は彼の手をぎゅっと握った