第10章 HERO
しばらくして、向坂の声が聞こえなくなり、殴り合う音も消えた
「くっそ、次は俺が相手だ!」
白髪の男の声が聞こえる
「お前なんて弱すぎて相手にならねぇよ」
日代君は嘲るように言う。
白髪の男は確かに相手にならなかったらしく、ものの数分で片付けられてしまった
「やっぱり二人は弱いな…」
私の側にずっと座っていた銀髪の男が立ち上がる
何だか妙に威圧感のある人だったので、離れてくれてホッとした
「そんなこと言っていいのかよ。リーダーにそんなこと言われるなんてこいつらの立場どーなんだよ」
り、リーダー⁉
そんなにみんなをしきっているようには見えなかった
けど何だか他の人とは違うオーラがあったのはそのせいなのかな
「みんなお前にやられちまったし、俺しかもう闘う相手いなくなったな」
銀髪が日代君の方へと近づいていく気配がした
「ナイフ使うとかセコ過ぎだろ。男ならもっと正々堂々と闘え」
そうだった…!私を脅すときにも使ってたあのナイフ…!
日代君本格的にヤバイんじゃ…
「まぁ、負ける気はしねぇけどな!」
二人が踏むステップは、私が聞いた中で一番速いと感じた
最初の二人の時と全然戦い方が違う…!
やっぱり日代君は手加減してたんだ…!
二人の荒い息づかいやたまに聞こえる鈍い音が私をハラハラさせた
「くっ…!」
初めて日代君が呻くような声を出す
「日代君…!」
思わず顔をあげそうになった
「みんな!宮原が見ていいもんじゃねぇ!」
日代君が叫ぶ
二人の殴り合いは長時間に渡った
いつ終わるんだろう?日代君に大したケガが無いといいけど…
様子を見れないことがさらに不安をかきたてた
しばらくして周りは静かになった
「終わったぞ」
そう言って私の前に座りこんだ日代君は笑顔を見せた