第10章 HERO
彼は少し息を切らし、握った拳はいくらか傷ついているように見えた
「来たぞ」
日代君は向坂を睨み付ける
「そのようだなぁ。」
「俺が来たんだから、彼女は開放してやれ」
「あんたが俺たちをやっつけたら、その後あんたが縄ほどいてやればいいだろ?まあ、あんたが勝てるとは思えねぇけどな」
向坂は今まで何度も見せたあの下品な笑みを浮かべる
「その言葉、そっくりそのまま返してやる」
日代君が構える
「宮原。お前こっちみんな。下向いてろ」
日代君に言われて、意味がよく分からなかったが言われた通りにする
と、その時、鈍い音がした。
「言っておくがこれは正当防衛だからな!」
と日代君の声がして、バキッともっと何かが激しくぶつかった音がする
「ぎゃ」
と、向坂の悲鳴が聞こえた
つまりこれは…
日代君が向坂と闘っている?
「優しいよね、彼。お前が人が力一杯殴られた所とか見慣れてないから、そう指示したんだ。でももしあいつがお前に見せてきた優しさが消えたとき、君はそれを受け入れることができんのか?」
銀髪の男が私の耳元で囁く
「っ、それは彼なら何か彼なりの理由がきっとあるからです。私が納得できる理由があるなら受け入れます」
私は下を向いたままだったけれど、これは本当のことなのでそれが伝わるよう力強く答える
「ふぅん、お前、面白くないね」
銀髪は私が全く動揺しなかったからか、そう呟いた
面白くなくてけっこうだ
私はそう言いたいのを押さえた