第10章 HERO
「にしても日代のやつ、おせえなぁ」
向坂がイライラしているのか、たばこを取りだし、荒い動作で火を付けた
「おい、やめろ。俺、その銘柄のやつすげえ嫌いなの知ってんだろう。お前、何やってんだ」
銀髪の男の人のこめかみに青く血管が浮いている。これはそうとう起こっている
ちなみに銀髪の男の人は私の横でナイフをもてあそんでいる
これは、私への脅しかな。
何かやったらすぐにでもナイフを使うって言いたいのだろうか
「まぁ、落ち着けって二人とも。あいつの学校から距離がなかなかあるだろう。」
白髪の男は、あきれたように言う
その時、ガヤガヤと向こうの方で騒がしくなる
「ん?何だ?入り口の方がうるせぇな」
ここはどうやらもともと工場だったのを、この人達が工場に置いていかれたものを使って仕切りをつくり、部屋みたいなものがいくつかあるようだ
「何かだんだんこっちに近づいて来てんな」
銀髪の男が嬉しそうな顔をする
「とうとう来たかぁ、日代ぉ!!」
向坂が拳をボキボキと鳴らす
ああ、来ちゃったんだ
少ししか関わりの無い私を助けるために自分からこんな危険な所へ
日代君が私のせいで怪我するのは嫌だから来てほしくないと、少し思ったりもした
でも、それは彼が絶対来ると信じていたからこそ思ったこと
きっとこんなことで来ない人だったら日代君が早く助けに来たらいいのに、と思っていたに違いない
心の汚い私でごめんね
今、近くで戦っている彼に向かって心の中で呟く
昨日のたった数十分間を共に過ごしただけだけれど、彼は本当に心優しい、友達を大事にする人だとわかった。正義感の強い人だと知った。
私、日代君に何度お礼を言ったらすむんだろう
そう思ったとき、彼が姿を現した