第42章 ほんの些細な日常も
「ん?どうかしたか。」
私の視線に気がついたらしい。日代君は振り返って私の目をじっと見つめる。
「んーん、何でもない。」
日代君のその視線で一気に顔が熱くなった。
なんだろう、付き合う前より照れること多くなったな…。
前なんか目を合わせるだけでこんなに赤くなったりしなかったのに。
私の胸は心地のよい早さで高鳴っている。
これは…。前よりもさらに、日を重ねるごとに、もっと日代君のことが好きになっているということなのかな。
私もすっかり馴れた手つきで、ヘルメットを被り、後ろの座席に勢いを付けて乗る。
「もう、俺の手無しで乗れるようになったんだな。」
日代君は振り向いて、目を細めて嬉しそうに言った。
「うん、何回も乗せてもらってるからね。」
日代君と晴れて恋人となった日から、夏休みは何度か一緒に出掛けたし、今はもう、二学期も半ば。
こんなにも日代君が近くにいることが当たり前になっている。
何てありがたいことなんだろう。
もう、日代君のいない日常なんて考えられないや。
勢いよく走り出して、力強いエンジン音を聞きながらそう強く感じる。
日代君とこれから先もずっと一緒にいたい。
この、後ろ姿さえも愛おしい。
思わず彼の背中に顔を埋める。
温かいなぁ。
学ラン越しに伝わる温かさに、自分の胸の内も温かくなるようだった。