第42章 ほんの些細な日常も
「さっき何かあったのか。」
私の家の近くの公園。日代君と一緒に帰る時に立ち寄るのは、すっかり習慣になった。
「さっきって?」
少し心配そうに眉を寄せながらコーヒーを飲む日代君。
私がそう聞き返すと、言いにくそうに少し視線をさ迷わせる。
「さっきバイクになってたときに引っ付いてきただろう。急に止まるわけにもいかねぇから、そんときは聞けなかったけどよ、何かあったかと思ってな。どうした、気分悪くなったか?」
相変わらずな心配性で、私は思わずクスッと笑ってしまう。
「違う違う。ただ…。抱きつきたかっただけ…。」
正直に話すのはなんだか照れくさくて、思わず目をそらしてしまう。
「…っ。お前なぁ…。」
日代君も動揺したらしく、珍しく物言いがハッキリとしない。
「ごめん、迷惑だった?」
「いや、それはねぇよ。」
でも、恥ずかしくても大事なことを伝えたいとき、そうやってちゃんと目を合わせて話してくれる所が大好きだ。
「でも悪いな。俺、あんま恋人らしいことしねぇだろ?」
「うーん、でも、私もその状態で一杯一杯だったから。」
それ以上のことされたら多分キャパオーバーしてたよ。
と付け加えると、
「今は。」
と彼は尋ねてくる。
「…今もそりゃあ緊張するけど、でも嬉しいよ。」
日代君は私が座っていたベンチの隣に腰かける。
いったい何をするのだろうと私は身を固まらせた。