第40章 お前の気持ち
「相手を傷つけたく無いなんてそんな悩み、どんなカップルでもあるんだよ、バーカ。それでも何度も間違っても、一緒に困難を乗り越える、それが愛だろ」
そんな傷つけたくないからって踏みとどまってしまったら、例え付き合えてもすぐに破局するに違いない。でも世の中には何千も何万ものカップルや夫婦がいる。その人たちが別れずにいるのは、相手を信頼して、二人で頑張っているってことじゃないか?
「お前は悩み事が多いけど、幸せになる権利はあんだよ。それにな、正直言ってお前より辛い状況のやつなんてごまんといるだろ。そいつらだって恋してる。それなのに誰が好きなやつつくっちゃいけないって言った?たまには自分のことも考えろ。」
雅には言ってやりたいことがいっぱいある。母親を亡くしてから、家族だけを守り抜こうとする姿に、自分のことも大事にしろと何度も叫びそうになった。
「あんまし自分ばっかし責めんな。だって…。俺にだって責任あんだろ。俺のことも責めていーんだよ。それに対して俺はお前が思い通りの人生を歩めるなら文句はいわねー。」
雅は大きく目を開く。
お前は喧嘩に明け暮れた日々を後悔してるんだろう?母親の死に目に、看病に付き添えなかったことに後悔してるんだろう?なら、その族に引き入れたのは俺だ。
俺は雅が誰かを好きになって、幸せそうに笑ってる、年相応の男子高校生の顔が見てみたい。
いつも焦るように大人になろうとして、人より何かを諦めたような顔を見るのは正直言って辛い。
それに、心春ちゃんが不憫だ。
「自分の気持ちに素直になれよ、雅。」
動揺している雅に俺は優しく話しかける。
雅は何を考えているのか、一言も言葉を返さなかった。