第40章 お前の気持ち
林さんside
「お前ら本当に付き合ってないわけ?」
姉さんと心春ちゃんが部屋を移動してすぐさま俺は雅に尋ねる。
「何回も宮原が言ってるじゃないですか。林さん、しつこいっすよ。」
雅が少し口を尖らせる。久しぶりに見たその幼い仕草に、俺はフッと笑いそうになった。
「だって心春ちゃんの目、あれは恋する乙女の目だな。」
雅に向けるあの目は、優しく、それでいて熱っぽい。それに雅に対する反応も何だか初々しい。
「なんすか、それ。林さんって他人のことは本当にすぐ気づきますよね。自分のことにたいしては鈍感なのに。」
大学でイメチェンしてモテる計画はどうなりました?と雅が言ってきて、ことごとく失敗したことを伝えるのは何だか癪だ。
それに俺の問いには答えていない。
「俺のことはいーんだよ。もしかしてそれについてはノーコメントで、しかも俺が他人のことには機敏だってことは当たってんだな?」
どうよ、どうよと雅を腕で軽くつつくと、雅は呆れたようにため息をつく。
「あいつのことは…好きですよ。」
雅の言葉に思わずヒュウと口笛を鳴らすと、少し睨まれた。
いや、からかっている訳では断じて無い。ただ当たったからしただけでなんて少し心の中で弁解する。
そんな俺をよそに雅は話し続けた。もしかすると話を聞いて欲しかったのかもしれない。
「でも俺、あいつが告って来たとき断ったんです。俺みたいに不器用なやつがお前を大切にできるかわからないって。俺、それでもし付き合ってあいつを傷つけたらって思うと怖くてそう返事するしかなかったんすよね。」
雅は母親に対する後悔も、妹に対する責任感も人より多い。だからそうなったんだろう。
でも。俺から言ってやりたいことはいっぱいある。