第39章 優しい手
「お、お邪魔しまーす…。」
林さん達の家は本当に工場から近くて、ものの十分もかからなかった。
そして私は今、3人の後に続いて林さんの家に足を踏み入れる。
「どーぞどーぞ!汚ないとこだけど我慢してね!」
夏実さんがそう言って私を招き入れる。
物が雑然と置いてあるけれども、ホコリが溜まっているわけでもなく、綺麗に掃除されている。
何だか暖かい雰囲気を醸し出していた。
「んじゃあまずはそのボロボロな方から手当てさせてもらおうかなー。」
夏実さんはどこからか救急セットを取り出してきて、日代君に椅子に座れと顎で示す。
「ボロボロって…。もう少しましな表現ないんですか。」
そう苦笑しながら座る日代君は、どうやら夏実さんに治療され慣れているらしい。
「だってそうだろー?もう腹とかアザだらけじゃんか」
そう言いながら何の恥じらいもなく日代君のTシャツの裾をめくりあげる夏実さん。
「うわっ!」
思わず変な声を出して目を背けてしまう。
お母さんのいう通りにたしかに日代君はシックスパックだった。
でも、恥ずかしい思いと共に、悲しみが沸き起こる。
大丈夫って言ってたけど、やっぱり彼のケガは酷かった。
お腹には青いアザが斑のようになっていて、見ている側まで苦しくなりそうだ。