第37章 救出
「雅、大丈夫か。」
林さんは何もなかったかのようにけろっとした顔で日代君に尋ねる。
「どうして林さんが…。」
「さっき電話したら、この子が出て、助けてって言われたからな。」
林さんは私の肩を叩きながら言う。
力が強いから林さんの手は少し痛い。
「まぁ、聞きたいことはいっぱいあるけどさ、まずはここから逃げるぞ。」
こいつらが目ぇ覚ましたら面倒くせぇからな。
と言って林さんは日代君に肩をかす。
「っと。それにしてもお前、重くなったなー。中学ん時はヒョロヒョロだったくせに。」
林さんよりも日代君の方ががっしりしていて、確かに肩をかすだけでも日代君の体重がかかれば重そうだ。
「私も手伝います。」
私はもう片方の日代君の腕をとって肩に回す。
「いい。重いだろ、俺。」
「重くったって、軽くったって私は手伝う!私だってケガした時に日代君に運んでもらったことあるから。助け合うのはお互い様だよ。それに、林さんもいるから大丈夫!」
私だって中学の時は筋トレしてたからそれなりに力には自信があるの!
と付け加えると、日代君は少し笑った。
いつもの優しい笑顔だけれど、口の端を切っていて少し痛々しい。
「そういや雅、お前ここまで何で来た。歩きか?それともバイク?」
「バイクです。」
そう答える日代君はいつもより少し幼く見えた。